「地球は宇宙で最も特別」元JAXA宇宙飛行士・山崎直子氏のReddit AMAに海外から質問相次ぐ
海外の大手掲示板Redditの宇宙コミュニティ「r/space」にて、元JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙飛行士の山崎直子氏がAMA(Ask Me Anything:何でも聞いて)を実施しました。山崎氏は2010年にスペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗しISSでの任務を遂行した経験を持ち、現在はアースショット賞の評議員として地球の持続可能性に取り組んでいます。
スレッドには、宇宙から見た地球の美しさ、JAXAでの11年間に及ぶ訓練、ISS日本実験棟「きぼう」への感慨、Artemis計画への期待、さらにはアニメ「宇宙兄弟」や「銀河鉄道999」といった日本のポップカルチャーとの接点まで、幅広いテーマで質問が寄せられました。
今回は通常の海外コメントまとめではなく、海外ユーザーの質問と山崎直子氏ご本人の回答をQ&A形式でご紹介します。
元JAXA宇宙飛行士の山崎直子氏がRedditのr/spaceでAMAを実施し、宇宙から見た地球、JAXAでの訓練、ISS日本実験棟「きぼう」、Artemis計画、アニメから受けた影響、持続可能性などについて、海外ユーザーから多様な質問が寄せられました。
海外の反応
質問: 宇宙から地球を見た後、一般の人が本当に変化をもたらすために取り入れるべき考え方や習慣は何ですか? また、地上にいる人々が気づかない、宇宙から見た地球で最も驚いたことは何でしたか? 山崎直子氏の回答: 宇宙に行く前は、宇宙そのものが素晴らしいと思っていました。 でも実際に行ってみると、広大な宇宙の中で地球が最も特別な存在に見えたんです。 それ以来、地球をより大切に思うようになりました。
質問: JAXAでの時間はどうでしたか? ミッションは何回行いましたか? 訓練プログラムはどのようなものでしたか? 宇宙に到達して驚いたことはありましたか? 山崎直子氏の回答: ISSへのミッションは1回です。 JAXAでは世界中の同僚と働くことができ、とても充実した時間でした。 宇宙に行くまでの訓練期間は11年間で、主にヒューストンで、ほかにカナダ、ドイツ、日本、ロシアでも訓練を行いました。 微小重力に人が驚くほどうまく適応できることに驚きましたね。
質問: JAXAの宇宙飛行士が月面に降り立つのを見られるのは、いつ頃になると思いますか? JAXAはArtemis計画の重要なパートナーですし、あの月面探査車が月を走るのを見るのが楽しみです! 山崎直子氏の回答: この10年以内にJAXA宇宙飛行士が月に行く姿を見たいと期待しています。 さまざまな国からさらに多くの人が続くでしょう。 Artemis計画では国際協力が鍵になります。
質問: (※Redditには日本語での質問も寄せられました) 山崎さんは開発初期からシステム統合や故障解析に携わっておられましたが、実際に軌道上で運用されているISS日本実験棟「きぼう」を目にしたときの、エンジニアとしての感慨はいかがでしたか? 山崎直子氏の回答: エンジニアとして開発に関わったISS日本実験棟が、実際に宇宙でしっかり稼働している場面に立ち会えたことは、とても感慨深かったです。 こうしたバトンをしっかり次につなげていきたいと思います。
質問: ミッション中に危機や怖い出来事はありましたか? また、宇宙での最高の思い出は何ですか? 一生心に残るエピソードを教えてください。 山崎直子氏の回答: 幸い深刻な危機はありませんでしたが、ミッションでは予期せぬトラブルが起こるものです。 私のミッションではISSへの接近・ドッキングに使うレーダーが故障し、星追跡装置で対応しました。 宇宙で初めて青く輝く地球を頭上に見た瞬間は非常に印象的で、微小重力では絶対的な上下がないと実感しました。 宇宙は遠い場所ではなく、故郷のように感じられました。
質問: 「宇宙兄弟」というアニメを知っていますか? 私がJAXAの名前を初めて知ったきっかけの一つがこの作品です。面白くて魅力的な職場のように感じました。 山崎直子氏の回答: はい、「宇宙兄弟」は私のお気に入りのアニメの一つです。 楽しんでくださっていると聞いて嬉しいです。宇宙はあなたを待っていますよ!
質問: 宇宙飛行士を目指すきっかけとなったインスピレーションの源は何ですか? 山崎直子氏の回答: 「Star Wars」のようなSF映画や、「銀河鉄道999」のようなアニメに影響を受けました。 また、NASAのVoyagerミッションやCarl Saganの「Cosmos」シリーズも大きなインスピレーションになりました。
質問: 世界が気候変動問題で一つにまとまるのは難しいと感じますが、ISS自体が国際協力の証ですよね。 多国間プログラムに参加された経験から、気候変動対策で世界が本当に協力するには何が必要だと思いますか? 山崎直子氏の回答: 軌道上から見ると、地球は一つの共有されたシステムだとわかります。 ISSが機能しているのは、すべての参加者が共通の目標に取り組んでいるからです。 気候変動対策にも同じことが必要で、目標を共有し、透明性を保ち、インセンティブを一致させることが大切です。
質問: 宇宙飛行士として体験したユニークなエピソードはありますか? また、STEM分野で働き、興味を持つ女性を増やすにはどうすべきだと思いますか? 山崎直子氏の回答: 宇宙飛行士としてのユニークな経験は、さまざまな文化や国を越えてチームで働くこと、そして私たちの故郷である地球を遠くから眺めることです。 女性のSTEM参画については、多様なロールモデルを知り、ネットワークを広げることが後押しになると思います。 私自身も、先駆者たちに励まされてきました。
質問: 地球に戻った後、船酔いのようなバランス感覚の乱れ(sea legs)など、地球の重力に適応する苦労はありましたか? 山崎直子氏の回答: 興味深いことに、宇宙の微小重力に慣れるよりも、地球に戻ってから重力に再適応する方が時間がかかります。 宇宙へ行く場合は通常1〜3日で慣れますが、数ヶ月宇宙で過ごした後に帰還すると、特に平衡感覚の回復に最大45日かかることもあります。
質問: 打ち上げの瞬間はどれくらい「怖い」ものですか? 長年の訓練を経た後は、最初に想像していたより落ち着いていましたか? 山崎直子氏の回答: 11年間の訓練を経ていたので、恐怖はありませんでした。 冷静に集中でき、チームと家族にとても感謝していました。 想像よりも快適で、宇宙船が自分の家のように感じられました。
質問: 人類の低軌道での理想的な未来をどのように描きますか? 持続可能性はどのような役割を果たすべきですか? 山崎直子氏の回答: 人類の未来は、ともに境界を広げていくものだと考えています。 低軌道では、より高度な水のリサイクル、空気の再生、食料・廃棄物管理、インフラ構築など、持続可能なエコシステムが期待されます。 持続可能性は宇宙でも地上でも不可欠です。
「宇宙に行く前は宇宙そのものが素晴らしいと思っていた。でも実際に行ってみると、地球が最も特別な存在に見えた」——山崎直子さんのこの言葉が、このAMA全体を貫くメッセージだと感じます。宇宙は遠い場所ではなく、地球を見つめ直すための視点でもある。11年間の訓練を経てISSに到達し、自ら開発に携わった日本実験棟「きぼう」が宇宙で稼働する姿を目の当たりにした感慨、アニメ「宇宙兄弟」や「銀河鉄道999」から受けたインスピレーション、そしてArtemis計画で日本人宇宙飛行士が月に立つ未来への期待。海外ユーザーからの質問一つ一つに丁寧に応じる姿勢から、宇宙飛行士としての経験を次世代につなげたいという思いが伝わってくるAMAでした。